研究活動

おくちと菌の関係

 人間の口の中には100億以上の菌が住んでおり、善い菌と悪い菌が共生しています。ですから、おくちの中はいつも菌で満員になっているのです。おくちの中は非常に温度が高いため、菌にとっては楽園とも言える繁殖しやすい環境です。

 しかも口の中の菌はただ待っていれば、人間が食事をとるたびにルームサービスのようにたべものが運ばれてくる、そんな環境に住んでいるのです。もし、お口の中の善い菌と悪い菌のバランスが崩れ悪い菌が繁殖してしまうと、歯やあごの骨を溶かし口臭の原因となる歯周病や虫歯になってしまいます。

仮)おくちと菌の関係2

悪い菌はどこからやってきた?

 悪い菌の代表としてあげた歯周病や虫歯の菌はお口のなかに住んでいるのですが、いったいどこからやってきたのでしょうか。それとも私たちが生まれたその最初からお口の中に住んでいたのでしょうか。

 実は、人間の口の中には最初から歯周病や虫歯の素となる菌がいるわけではありません。生まれたばかりの赤ん坊のお口の中にはそれらの菌はいないのです。では、菌はどこからやってきたのか。それは、最初の大半はお母さんから菌をもらい、母子感染しているのです。最初は持ち得なかった菌をヒトからもらい受ける、これは感染と言います。温かいご飯を食べさせる時にやけどを防ぐためフゥーフゥーとご飯に息を吹きかけたその食べものに、愛情を注ぐためにキスをした瞬間に、自分が持っている口の中の善い菌も悪い菌もうつっていくのです。それゆえに歯周病や虫歯は感染症という病気に分類されるのです。

仮)おくちと菌の関係1

 ヒトは歯磨きをして虫歯を予防し、悪い菌を抑えようと善い菌も抑制しています。毎日「人間+善い菌」対「悪い菌」は戦っています。ヒトにとって善い菌も悪い菌も、ただそこに存在して繁殖しようとするだけなのですが、どうせなら善い菌に長く住んでもらいたいものですよね。

歯周病や虫歯って絶対になるの?

 世の中には一度も虫歯になった事がないという人がいますが、虫歯になる人と虫歯にならない人、いったいどこが違うのでしょうか。口の中を不衛生的にしていたから虫歯になる? それもあります。ですが歯磨きを毎日欠かさず行っている人でも虫歯になる方は大勢いらっしゃいます。虫歯の原因である悪い菌の繁殖を抑えられず、虫歯の原因である菌が大量に繁殖してしまい虫歯になってしまったのです。実際には、虫歯にならない人というのは虫歯の原因である菌の繁殖を抑え善い菌と悪い菌のバランスを保ち虫歯になりにくい環境を保った方なのです。

 歯周病や虫歯にならないよう予防する手立てとして歯磨き以外では、洗口液(デンタルリンス、マウスウォッシュ、口内洗浄剤とも呼ばれる)などもあります。では、おくちの中の菌を殺菌してしまえば歯周病や虫歯にはならないのでしょうか。それにも少し問題が発生してしまいます。

 それでは、悪玉菌と戦っていた善い菌まで殺菌してしまっているからです。