研究活動

日本歯科保存学会(熊本県熊本市)発表

- 平成22年 6月 -

日本歯科保存学会にて北海道医療大学 歯学部 う蝕制御治療学との共同研究、キシリトール洗口液および乳酸菌タブレットの唾液中ミュータンス菌レベルへの影響について講座を行いました。

日本歯科保存学会

日本歯科保存学会
[外部リンク]
http://www.jscd132.org/

北海道医療大学
北海道医療大学
[外部リンク]
http://www.hoku-iryo-u.ac.jp/

歯学部 う蝕制御治療学

キシリトール洗口液および乳酸菌タブレットの唾液中ミュータンス菌レベルへの影響

キシリトールは、う蝕原因菌に酸を産生させない事から非う蝕性甘味料として使用されている。これまでに、キシリトール配合ガムを長期間摂取することで、唾液中のStreptococcus mutans菌数が減少するという報告は多数あるが、キシリトールを主成分とした洗口液の唾液中S. mutans菌レベルへの影響に関する報告はほとんどない。また、乳酸菌は整腸や免疫増強などのプロバイオティクス療法に用いられ、その予防や治療効果において有効性があると報告されている。さらに、歯周病関連菌への抗菌作用も明らかとされており、乳酸菌によるう蝕、歯周病予防への期待が高まりつつある。そこで今回、キシリトール洗口液および乳酸菌WB21株タブレットを使用した際の唾液中S. mutans菌レベルに対する影響を調べその有用性を検討した。

[材料および方法]
キシリトールのS. mutans菌増殖抑制効果:96wellプレートにS.mutans菌液を播種し、キシリトールを最終濃度0.01%、0.1%、1%添加し、37℃、嫌気条件下にて24時間培養した。吸光度を測定し細菌増殖能への影響を調べた。

キシリトール洗口後の唾液中キシリトール残留濃度:今回の実験に対して同意を得た被験者に5%キシリトール洗口液10mlにて1分間洗口してもらい、10分ごとに唾液1mlを採取し、キシリトール残留濃度(mg/ml)を測定した。

キシリトール洗口の唾液中S. mutans菌レベルに与える影響:今回の実験に対して同意を得た被験者より洗口開始前唾液1mlを採取した。洗口液10mlにて1分間洗口、これを1日3回4週間継続してもらい、4週間後唾液1mlを採取した。MSKB寒天培地を用い唾液中のS. mutans菌数を測定し、洗口開始前と4週間後で比較検討した。

乳酸菌のS. mutans菌増殖抑制効果:乳酸菌タブレット(WB21株、ワカモト) 1錠をPBS 10mlにて溶解後、100μlを採取しS.mutans菌液100μlと10、20、30分間混合させた後、MSKB寒天培地上にて培養した。S. mutans菌数を測定し乳酸菌のS. mutans菌増殖能への影響を調べた。

乳酸菌タブレットの唾液中S. mutans菌レベルに与える影響:今回の実験に対して同意を得た被験者より摂取前唾液1mlを採取した。乳酸菌タブレット1個を摂取してもらい、摂取後唾液1mlを採取した。MSKB寒天培地を用い唾液中のS. mutans菌数を測定し、摂取前と摂取後で比較検討した。

摂取前と摂取後 グラフ

[結果および考察]
キシリトールは濃度依存性にS. mutansの増殖を抑制した。また、キシリトール洗口後の唾液中キシリトール残留濃度は、時間経過とともに減少し60分後では検出されなかった。キシリトール洗口4週間後の唾液中S. mutans菌数は洗口開始前に比べて約60%減少した。乳酸菌は接触時間の経過とともにS. mutansの増殖を抑制した。また、タブレット摂取後の唾液中S. mutans菌数は摂取前と比較して減少した。キシリトール洗口液および乳酸菌タブレットにより唾液中のS. mutans菌レベルを減少させることが分かり、齲蝕予防としての有用性が示唆された。

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